私がいた場所。

「そういえば、なんですけど」
「ん?」
ひとしきり笑い終わった沖田さんに微笑んだ。
ん?って…なんかかわいいなぁ。
「名前、呼んでくれましたね。はじめて」
「…あぁ、それね。うん、ほんとはね一生呼ばないと思ってたんだけどね」
「それは…どうしてですか?」
沖田さんは上体だけを起こして上を見上げている。引き締まった身体は細いけれどしっかりしていて、天井しかない上を私も見上げた。
「名前っていうのはね、呪いなんだよ」
「呪い…?」
「そう。名前を認識して、それを口にしてしまったら人はその人に情がわいてしまうんだ。だから呪い…なんて人伝にきいた話なんだけどね」
沖田さんのその言葉は妙に頭の中で落ち着いた。自然と納得できるような、そんな言葉。
「俺は、新選組一番組組長沖田総司。怪しいやつや法度の違反者は切り捨てなくちゃいけない。でもそうするには時に、情をも捨てないといけないんだよ。だからはじめから名前を呼ばないようにしていたのにな」
「どうして呼んでくれたんですか?」
「…君の意志がみえたから、かな。すごくまっすぐな瞳をしていて、あぁ、この子は新選組のために一生懸命になってくれるんだってわかったから」
ぽろっと涙を落ちたのがわかった。
沖田さんが認めてくれた嬉しさと安心の両方からきているんだと思う。隠さずに惜しみもなく流れる涙に沖田さんが唇を落とした。
「ねぇ?俺は君の名前を呼んでしまった。これでもう君を失ってしまうことがこわくてしょうがなくなったよ」
「そんなの…」
まるで告白みたいだ…と続けるまえに軽く口づけをされて引き寄せられる。
「好きだよ」
耳元で響くその声は心地いい。