私がいた場所。

「甘味好きなんだ?」
「はい!甘いものは大好きです」
ふーん、と沖田さんはご機嫌そうに笑うとこんぺいとうを一粒目の高さまで持ち上げた。
「俺はこれが一番好き」
「こんぺいとうですか?甘くって美味しいですね」
「ちょっと甘ったるいくらいだけど、長持ちするし持ち運びも便利だしね」
「沖田さんもしかしていつもこんぺいとうを持ち歩いてるんですか?」
「うん、そうだよ?」
そこまで好きなんだ…。島田さんといい勝負かもしれない。沖田さんって近所の子供と遊んだりしてるし案外、子供っぽいのかも。
「でもさっき一くんと一緒に買い出しにいったとき、一くん結構いいところ知っててさ」
「あ、それは前島田さんに聞いていたからじゃないですか?」
「あの人そこまで甘味好きではなかったと思うけど」
「私に買ってきてくれてたんです」
そう言うと沖田さんが少しだけ眉をひそめた。
「一くんが?君に?」
「はい、まだあまり部屋から出ないようにしていたときは、ですけど」
「ふーん…じゃあ今度からは俺に頼みなよ」
その言葉に沖田さんを見ればこんぺいとうを口の中に放り投げているところで、ひらりと舞ってきた桜の花びらが鼻の頭にのった。
「えっと、それじゃあ今度おすすめの甘味処に連れていってくれますか?」
「…いいよ」
くすっと笑って花びらをとってあげると沖田さんはお酒のせいではない赤みを頬にのせた。それに恥ずかしくなったのかぶっきらぼうな一言を残すと、ふいっと向こうをむいて近藤さんのところへいってしまった。