「沖田さん、斎藤さん!」
先程縁側を通ったとき見かけていたので二人はすぐに見つけられた。
「どうかしたのか?」
「なんだかうれしそうだけど何かあったの?」
軽い打ち合いを中断して二人はこちらを向いてくれる。軽く、といってもそれは二人にとってなのであって私からしたら十分すごいのだけれど、汗一つかいていない様子なので二人にしたらやはり軽いものなのだろう。
「お花見するそうです!」
「は?」
「…すまない、順を追って話してくれないか?」
沖田さんには怪訝な、斎藤さんには苦虫をかんだような顔をされてしまいいきなりすぎたかと私も苦笑した。
「桜が咲いたので平助さん原田さん永倉さんが花見をしたいとおっしゃって、土方さんも近藤さんの一言で頷いてくれたのでお二人にも知らせようと」
「なるほどね。その光景が簡単に浮かぶよ」
「うむ。騒ぎがあるときの始まりは大体あの三人が原因だからな」
「近藤さんに宥められてため息をつく土方さんも想像できるしね」
「あはは…」
確かにいつも通りの光景なので二人にとっても想像しやすいだろう。でも二人の表情から呆れの中にも口元を緩めるくらいには楽しみがあるようだ。
「はい」
「わっ!」
急にぽいっと投げられた木刀を慌てて受けとると沖田さんは楽しそうに笑った。いつも私の慌てる姿を見て楽しんでいる沖田さんにいい加減慣れようと思うのだが、毎回急にやられるため思う壺になってしまうのだ。そんな私たちをいつも隣の斎藤さんは呆れたように見ているのだが、止めようとはしない辺り実は彼も楽しんでいるのではないかと疑っていたり。
「俺も買い出しにいってくるからそれ片付けといて?」
「あ、はい」
「待て、お前だけでいくと甘味ばかりになりそうだ。俺もいく」
「じゃあ斎藤さんのも片付けておきますね」
「…すまない」
一瞬ためらったようだったけれど差し出された木刀を受けとると沖田さんがまた笑う。
「使い走りみたいだね」
「総司…!すまない、そういうつもりで渡したのではない。やはり俺は自分で片してこよう」
「いえ、買い出しも大変だと思うのでお二人で行ってきてください。これくらい気にしませんし」
「…そうか?ならばよいが。総司、待て」
話している間にさっさと歩き始めてしまった沖田さんを追いかける斎藤さんの背を見送ってから二人の木刀を持ち直して道場へ向かった。