ひらりと舞い降りていた花びらは私の手のひらの上に乗った。
「もうそんな季節なのか…」
その花びらを何となく懐にしまって頬をゆるめた。
太陽の光があたたかい。







「なぁなぁ、二人とも!」
「いいじゃねぇかよー」
「久しぶりに、こう…ぱあっとさ!」
「なんのお話をされているんですか?」
通りがかった部屋で土方さんと近藤さんをどうにか説得しようとしている三人組を見かけて声をかけた。
「ん?椿か!」
「おお、ごくろうさん椿」
「いえ、で、どうしたんですか?」
「いやな?ほら、もうあったかくなってきただろ?」
「そうですね」
なんとなく平助さんの歯切れが悪いのは奥にいる土方さんの睨みが恐いからだろうか。それも気にしない永倉さんがいつもより声を大にして話し出した。
「桜だよ、桜!ほら、もう咲き始めてるだろ?」
ああ、と朝のことをおもいだした。確かに桜はもう咲いていてはやいものは少しずつ散り始めている。
「で、俺らは花見してぇなって!」
「花見、ですか?」
「おい、新八、そいつを味方につけようとするな」
「だってよ、椿も花見してぇよな?な?」
「そうですね、楽しそうですし」
みんなでお花見なんてすごく楽しそうだ。
土方さんも呆れたように私を見たけど素直に口にしてしまったのだから仕方がない。私も平助さんたちに加勢しようと思ったところで困ったように笑っていた近藤さんが口を開いた。
「まあ…たまにはいいんじゃないか?」
「な、おい、近藤さん!」
「今年も無事に皆桜が見れたのだ。めでたいことじゃないか、なぁ歳」
「……はぁ、しかたねぇな」
「っしゃぁ!!」
「そうと決まれば酒を用意しねぇとな!」
近藤さんの駄目押しで土方さんがため息をつき回りが騒ぎ出す。ことあるごとに見る光景だけど、見るたびに土方さんの中で近藤さんの存在がどれ程大きいものなのか分かっていく気がする。
「やったな、椿!」
「はい、近藤さんに感謝ですね。ありがとうございます」
「いやいや…。しかしやるからには準備せねばな。君は他の者達にも知らせてきてくれるか?」
「はい、もちろんです」
ぺこりと頭を下げて中庭の方へ向かっていく私を近藤さんは優しい目で見ていた。