山崎さんと別れて着物をかしてくれた人の家に行き、もとの袴に着替え直す。借りていたものを綺麗にたたんで返そうとするとぜひ持っていってほしいと言われた。もう、それを着る若い子がいないからずっとしまっておくしまうよりは、と言われたのでそれならばとありがたくいただいた。使う機会はこれから多分あるだろうから。女の格好で町娘として侵入したりね。外に出るともう暗くて待っていてくれた永倉さんの肩をとんとんとたたく。
「ありがとうございました」
「ん、いや、別にいいって。だって新選組の中でお前の女装姿見たことあんの俺と一応山崎だけってことだろ?すげぇ得した気分!今日が非番でよかったぜ、佐之の奴にでも自慢してやろっと!」
「あはは」
これ以上ないほどに嬉しそうな、得意気な顔をしながら歩く永倉さんの歩幅を見て私はやっぱりこれくらいの歩幅が好きだと思った。












「ん?分かっとったに決まっとるやろ?」
「ええぇっ!?ど、どういうことですか!!」
屯所に帰るとすぐに山崎さんに捕まって医務室へ連行された。そして衝撃の一言に私は息をするのも忘れかれた。
「いやぁ、こっち向いた瞬間にもう分かったんやけどな?自分が必死に女やっとんのがおもしゅろうて!まぁ、あれ自体が罰みたくなってもうてたし、俺やから気づいたけど他の奴なら分からんくらいの変装やったでええかなって」
「な…はあぁ……」
返す言葉を考える気力もなくなってただ深い息をはくと山崎さんがにまにまと笑う。
「案外、お似合いやったで?」
「からかわないでください…」
ていうか、今かんがえてみたら女装した意味はなかった気がする…。幹部だから話しかけにくいっていったって山崎さんは気さくな人だからそんなの通用しない。女連れだったかってそうだ。それに永倉さんといれば山崎さんに見つかる前にこちらが見つけられるかもしれないと考えていたが、本業の山崎さんにこちらが気づくはずもなく普通に話しかけられていたし。
…なんていうか、やった損。
「ま、ちゃんと女として使えるって分かったしな。にしても自分、胸意外とあるんやな」
「どこ見てたんですか!って今も見るのはやめてくださいっ!」
「いつもはさらし巻いとるんか、きつくないん?俺の前ではとっといてもええで?」
「手を伸ばしたまま近づかないでくださいーっ!!」
…この人ほんとに有能な人材だっただろうか。