「ああ、こいつの着物?」
「そ。買いにいってやろうにもこの格好じゃ外にも出れねェだろ」
「確かにな。こんな足だしてる奴そこらに置いといたらどうなるかわかんねぇぜ。佐之さんのよりは丈も合うだろうし、俺のを貸してやるよ」
「ありがとうございます…すみません」
「別に謝ることじゃねぇよ、好きでこうなったんじゃないんだろ?礼だけいっときゃいいんだ」
当然のように藤堂さんはそう言って私の頭をくしゃりとなでると部屋に入った。原田さんに背を押されて私も中に入れてもらう。首を持ち上げてみれば原田さんの笑った顔が目にはいって言葉にできない気持ちに胸が締め付けられる。下唇を噛んで少しだけ目を閉じてから一歩前にでると自然と口端が上がった。





「これなんかどうだ?」
「紺か、まぁ明るい色だと女ってバレやすいかもしんねェしいいんじゃねェか?」
「じゃあ、とりあえず晒しとこれで…」
「おーい、平助入るぞ、ってえーっと確か東條だっけか?」
「はい、永倉さん。今、お二人に着物を見てもらってまして」
「ああ、なるほどなぁ。その姿はちょっとなぁ…飢えてる俺たちからすると刺激的っつーか、なぁ?」
「ちょ、なんで俺にふるんだよ。俺は別にそういうことに興味ねぇから」
「嘘言うんじゃねぇよ!春画も持ってるくせによ!」
「なっ!?何で東條の前でそういうこと言えるんだよ!馬鹿じゃねぇの!?」
「あ…」
突然の言い合いに驚いてなにも言えなかったが、春画って所謂性的な処理をするためのものですよね。…まぁ、男の人なら普通なのかな。
「だいたい新八も佐之さんも持ってるだろ」
「まぁなぁ…男ならな」
「つーか何でこんな話してんだよ、俺ら」
「あ、私は別に気にしないので…春画って浮世絵とかもありますよね?」
「ああ、そうだけど」
「私がいた時代まで残ってるものも有るんですが、いつの時代も考えることっておんなじようなものなんだなぁって思ってました」
江戸について調べているときに知って初めてみたときはうわぁ…とか思ったけどそこまで現実的じゃないというか女の裸体に蛸がまとわりついてるのとか考えることは同じなのかとかなんとか考えながら見たくらいだ。
「っつーことは見たことあんのかよ」
「一応は」
藤堂さんは何故かがっくりと項垂れて原田さんと永倉さんは面白そうに私を見る。