「…びっくりしました」
「悪かったって!」
むすっと頬を膨らませた私をなだめるのは永倉さんで、まあ団子を買ってくれたから許してあげよう。
あのとき私の手をつかんだのも永倉さん。どうやら今日は非番でぶらぶらと歩いていたら私を見かけてちょっと追いかけてきたらしい。にしても本当にびっくりした。山崎さんに捕まったかと思った…。
「で、お前どこかに用でもあったのか?」
「いえ、今山崎さんと鬼ごっこ中なんです」
「は?鬼ごっこ?」
「はい」
首をかしげる永倉さんに事情を説明すると、なるほどなぁと頷いた。目線があわないから多分私の話を聞いて気配に気にしてくれているんだと思う。ちょっと頼もしい。
日の傾きからして今は四時くらいだろうか。あと二時間くらいはある。
「お、そうだ」
「なんですか?」
なにか思い付いた様子の永倉さんの声に耳だけを傾ける。
「女の格好すればいいんじゃねぇ?」
「はい?」
「知り合いに宛がいるからよ」
「いや、ちょっと、」
待って、という私の言葉は聞こえないのかずるずると引きずられていった。