「さて、」
ごくりと唾をのみこんでへらへらと笑う男から後ずさる。
「見ぃつけた☆」
くるりと方向転換をして全速力で走り出す。
なんでばれた!?なんでこんなにはやく見つかった!?!あの人は犬か何かか!!?





遡ること数刻前。
医務室で正座をするのは私と山崎さん。
山崎さんは監察方で仕事をしつつ医学も学んでいるため、医務室にいることも多いのだ。
「約束通り年が明けたからまぁ、いろいろ教えたろう思とたんやけど、やっぱ忙しいねんな」
「はあ」
「でもなんもせんと急に外に出されても困るやろ?」
「そうですね」
なんだろう、この嫌な予感。
山崎さんがいつも以上にへらへらしているからだろうか。
「で、考えたんやけどな、習うより慣れろっちゅうわけで鬼ごっこでもしよかと思うて」
「鬼ごっこ…ってあのにげて、つかまえてってやつですか?」
「そそ。ってゆうてももちろん普通のやないで?」
…そんな気がしていましたよ、はい。
「どういったものなんですか?」
そう聞くと山崎さんはにやりと笑って説明し始めた。
「範囲は京全体。時間は、せやなぁ…昼餉とって一刻した頃から日が沈むまでや。どんな手を使ってもええけど、日が沈んだとき俺につかまっとったら罰はあるで?」
「罰っ!?なんですか、それ」
「それはゆうたらおもろないやん。誰かにかくまってもらうのもありやし、変装して見つからんようにしとってもええで」
「はい」
なるほど。町にとけこんで見つからないようにしろってことか。確かにこのルールなら変装して町に紛れることも、敵に見つかったときの撒くこともできるようになるだろう。…罰っていうのが気になるけど。
「ま、頑張ってもらわんとあかんけど変な怪我はせんようにな」
「はい!」
なんだかんだ言って優しい山崎さんに元気よく返事をした。
こんな感じなら以外と手を抜いてくれたりとかするかも…。