「あけましておめでとうございます」
「おー、おめでとう」
「おめでとうございます」
「あけましておめでとう」
日がのぼってから広間に顔を出すとそれぞれ挨拶がかえってくるけれど朝方近くまで飲んでいた人たちの中ではまだ雑魚寝している人もいる。いつもだったら起こしてまわるけれどまぁ今日くらいはいいだろう。昼になる前には起こした方がいいのだろうが、もう少しゆっくりさせてあげよう。
勝手場にむかい、朝餉の準備をしていると平助さんが来てくれた。
「手伝うか?」
「うん、ありがとう」
膳を運ぶだけの状態にして二人で座って熱いお茶をいれた。猫舌な私はふぅふぅとお茶を冷ます。平助さんもそこまで熱いのは飲めないのか少しずつちびちびと口に含んでは喉を上下させる。
「なんか今日は一段と冷えるな」
「雪でも降るかもしれませんね」
「そうだなぁ…寒いならいっそそうなった方がいい気がするな」
「確かに、そうしたら寒さも楽しめるもんね」
こくんとやっと口に含むことのできたお茶を飲み込む。反射なのかふぅ、と息をつくと隣から視線を感じる。
「お前さ、ここに来たときと比べると強くなったよな」
「うん?そうだね、教えてもらってるし」
「いや、なんつぅか剣術とかそういうことじゃなくてさ…心、みたいな?」
「心…」
うーん、と平助さんは頭を抱える。
精神的に強くなったといいたいのだろうか?確かにここにきたときはまず気が動転していて精神的に安定していなかった。着るものから生活のリズムだって何もかもが違っていたし。
「あとさ、なんか綺麗になった」
「えっ…と」
急に口説き文句のような言葉を言われてうつむいた私に平助さんも恥ずかしくなったのか、えーと…やら、うー…やら、違くて、と繰り返している。
そう焦ったように否定されるのも恥ずかしいんですけれど。もう冷えきってしまったお茶を一気に飲み干すとばっと立ち上がって外に繋がる戸をあけた。
ひんやりとしていて少し火照った頬を冷ましてくれる。
「少しあるかない?」
平助さんは首もとをさすりながら頷いた。