未来でいうクリスマスは普通に何事もなく過ぎた。キリスト教は禁止されてるしね。そして、年末と年越しが間近に迫っているということで買い出しにいくことになった。
「荷物は俺たちが持ってやるからな」
「お願いします」
「ああ」
永倉さんと斎藤さんが荷物持ちについてきてくれたから安心だ。年越しが近いからか町を歩くとみんな忙しそうで寒さもとんでいきそうなくらい。
いい野菜や魚を選んで二人が背負っているかごに入れていく。ある程度買って、買い残したものがないかと確認していると女物の飾りがたくさん売っているところを見つけた。
「わぁ…綺麗」
「お前もほしいのか?こういうの」
「うーん、でも付けるよりは見てる方が好きかもしれないです。自分につけたら見れませんしね」
「だか、いつかはお前もこういったもので身を包んで暮らしていくのだろうな」
「そう、なんですかねぇ…」
正直忘れそうになっていたが私はここの時代の人間ではない。このままこの時代を生きていくのかそれとも、いつかは戻るのか、そのタイミングもわからない。
「あ、でも櫛は欲しいですね」
鼈甲でできた櫛を見ていると誰かの手がのびてきてそれをとった。その手の主を見ると斉藤さんで思わず声をあげる。
「斉藤さん?」
「これを、」
「毎度!」
斉藤さんはそのまま手にした櫛を店主に見せると代金を渡して私の掌にのせた。
「これだろう?」
「も、もらえませんよ!そんな…」
「いらぬのなら、こいつのいく宛が無くなるのだが」
「斉藤さんにいい人ができたら渡してくださいよ」
「その時はその時で買う」
「うっ…」
確かにいい人には新しいものをあげたいか…。でもだからといって本当に貰ってしまってもいいのだろうか。永倉さんを見るとにっと笑って貰っとけよ、と言われる。