広間にいくとまだ少し早いせいか沖田さんしかいなかった。寒いのか体を丸めていて猫みたいだ。
「あ、おはよう」
「おはようございます。はやいですね」
「寒くて起きちゃったんだよね。…ん?」
「なんですか?」
少し眉をひそめた沖田さんに聞き返すとじっと見つめられてからにっこり笑いかけられた。
「何でもないよ。そういえば昨日は佐之さんといたんだね」
「え、ええ。お酒をいただいてました」
私もにっこり笑って返すけれど漂う空気は微妙だ。そこに冷たい風が吹いて開いた襖を見ると着替えた原田さんが入ってきて私はそっと目をそらした。
「佐之さん、おはようございます。寒いからはやく閉めてくださいよ」
「おお、わりィな」
「で、佐之さん、昨日は楽しかったの?」
「っは!?なにが!!?」
馬鹿だ…分かりやすすぎる。
軽く原田さんを睨みつつとりあえず口を出さずにいると、沖田さんがちらりと私を見てまた口を開いた。
「お酒、一緒に飲んだんでしょう?」
「あ、ああ。まァな、いい酒だったし…って」
原田さんも沖田さんにつられるようにしてちらりと私を見た瞬間、ずんずんと近づいてきて襟を直された。
「わり、跡残ってた。いつもより襟に気ィつけてくれ」
「な…」
眉を下げて謝った原田さんが私から離れると沖田さんと目があってまたにっこり笑われた。
「どうかした?」
「イエ…」
「そう?ところでさ、佐之さん今日の稽古の打ち合いは俺の相手してくれませんか?」
「ハイ…」