肌寒さに目を開けるともう辺りは明るい。
後ろから回されている腕の感触が妙に鮮明に感じられる。
「………」
これが朝ちゅんというやつですか。
するりとそのたくましい腕をすり抜けて、着物を着るとまだ眠りこけっている彼を揺らした。
「朝ですよ、起きてください」
「ん…んん?…あー、椿?」
「はい」
「昨日は…」
「なにも覚えてないです」
にっこり。
「…だよな、俺も覚えてねェな」
「二人でお酒を飲みすぎてしまったんですね。…ちょっと頭と腰がいたいですけど」
「の、飲ませ過ぎちまったんだな、わりィ!」
「いーえ。では、私は先に行くので」
「おう」
廊下に出て一旦自室に戻る。襖をしっかり閉めてからそのまま畳に倒れこんだ。
…やってしまった。
いや、ほんとに昨晩のことは覚えてないんだけどね!?…あんまり。でもあの朝の状態を誰にも見られなくてよかった。
原田さんも何もなかったことにしてくれるみたいだし大丈夫だよね。しばらくは顔あわせづらいかもだけど。