いつも通り夕餉をみんなでとって、私はおすそわけして。
こないだまでは山南さんも自室で食事をとっていたけれど出てきてくれるようになって、少なくなっていたみんなの笑顔がまた戻ってきた気がする。
食器などを片付けて、自分の腕をさすりながら廊下を歩く。やっぱり水は冷たい。お風呂にでも入りたいけど八木邸にはないし、銭湯に行こうにもこの時代の銭湯は混浴だからなんとなく気が引けるというか。好んでは行きづらいかな…。
「あ、土方さん、なにされてるんですか?」
「あ?…椿か。いや、今夜は冷えきってるから月がよく見えるんじゃねぇかと思ってな」
寒くはないのかな。ていうか、土方さんがそういうこというとなんか、
「豊玉さん…?」
「なっ…んでそれを知ってやがる」
げ。眉間の皺がいつもの倍だ。
「未来でも残ってるからですよ。梅の花 一輪咲いても…っわ!」
「詠み上げんな!!」
勢いよく口を塞がれて睨まれる。
息ができないと手を叩いて伝えると離してくれたけれど、また詠み上げようものなら今度はどうされるかわからない。
「お二人で見つめあってますけど、付きおうてますん?」
「っわあぁっ!?って山崎さん」
「見つめあってなんかねぇよ、睨んでただけだ」
「へぇ…まぁいいですけど。土方さんに報告せなあかんで東條はむこういっとき。死にとうなかったらな」
「…はーい」
監察方の仕事は情報を集めること。
それは外はもちろん、中もだ。新選組の中の誰かが間者だったのだろうか。もし私が今それを知ったらまだ「表情をつくる」ことのできない私はそいつに殺されるだろう。
「土方さんも山崎さんも優しいよね」
閉じられた襖を見てそう言うとくるりと反対方向に足を進めた。