「なんだ?珍しいのか?」
「実物見るのは初めてです」
原田さんの足が止まったところで襖を開けてあげて一緒にはいる。火鉢で炭火をいけるとあったかくて、手を近づけた。
「あったか~…」
「ん」
「わっ、つめた!」
火鉢にあてていた手を急に原田さんにつかまれてその冷たさに手を引くと原田さんが可笑しそうに笑う。
「なんで私の手を掴むんですか、火鉢にあててくださいよ」
「椿の手の方があったかそうだったから」
「さっきまで一緒に水さわってたんですから冷たいにきまってるじゃないですか」
「俺よりはあったかかったけどな」
へらへらと笑う原田さんを半目で睨むと冷たい手首を掴んで火鉢にあてさせた。
「これでいいですか」
「随分積極的だなァ」
「ちがっ…!…原田さんって沖田さんに次ぐ意地悪ですね」
「椿っていじりやすいからな」
「うれしくないです」
離そうとしたけれどまた手をつかまれてむしろ引き寄せられた。そのまま足の間に座らされて後ろから抱きしめるかのように覆い被さられる。
「あったけぇ…」
「重いです…」
「おお、わりィわりィ」
後ろからのびた裾からは筋肉質な腕が見え隠れしていてちらりと私の腕を見るとひょろっとしていた。
「…男女の差ってひどい」
「ん?どーした」
「私も毎日鍛えてるのに腕はひょろひょろのままだもの」
「お前が俺や新八みてェな腕っていうのも嫌だけどな。でもお前見た目より力あるよな」
「そうですか?」
「どっかのお姫サマみたいに細い腕してんのに重てェ洗濯物とかお膳とか、茶だって人数分は重いだろ」
「お姫様はやめてください…」
でも確かにそういうことで苦を感じたことはない。平助さんにはじめて剣術を教えて貰ったときも力あるって言われたっけ。
「いや、ほんとお姫サマみたいに綺麗だぜ?男装してんのがもったいねェ」
「今更女の子の格好とかはなんだか恥ずかしいからしたくないですね」
「でも芸鼓やるんだろ?」
「半分遊女みたいなものですけどね。でもそれは仕事ですから、普通に着て見せるのは恥ずかしいです」
そんなモンか、と少し低めの声がすぐ近くから聞こえるというのは心臓に悪い。正直しっきからばくばくいってる。
「あ、食事の準備してきますね」
「おー」
やっと逃げ口を見つけ出して立ち上がるとそそくさと部屋を後にした。