美しく染まった紅葉も落ちきって、吹いた風が余計に寒さを際立たせた。
「手が…死にそうです」
「麻痺してきてやがる…」
季節は関係なく洗濯物は出てくる。血の気の多い新選組ならばなおさらだ。水は冷たすぎてむしろ暖かいような気がしてくる。
隣で同じように肩を震わせながら桶に手を突っ込んでいるのは原田さん。洗濯物に悪戦苦闘していた私を見かねて手伝ってくれるといってくれたのだ。手の感覚がなくなってきた頃までには洗い終わって干したが、少し曇っているから乾いてくれるかはわからない。
「もう年末が近いなァ」
「そうですねぇ…って年末!?」
…そっか、年末。今まで普通に屯所の中でしか過ごしてなかったからあまり季節の行事にも関心を持たなかったけどもう年を越す季節なのか。
桶を片付けてすこしはなれた物置まで歩く。なんでもいいものがあるそうで。
「椿はおせち作れるか?」
「うーん、頑張れば。でもそれなら買い出しいかないとですね。あと、年末なら大掃除もしないと」
「掃除かァ…っと、あったあった」
ごそごそと物置を漁っていた原田さんがやっとこちらを向いた。髪についた埃をとってあげてから手の中にあるものを見ると陶製の小ぶりな火鉢だった。
「わぁ!いいですね、あったまりたいです」
「おう。って探してて思ったけどここもちゃんと掃除してやんねぇとな」
埃まみれになっちまったとぼやいた原田さんに苦笑して、肩や背に残った埃を払ってあげる。
「普段使う廊下とか勝手場のものは毎日できるだけ掃除してるんですけどどうしてもこういうところは…ものが多くて男手も必要ですし」
「ま、今度隊士たち全員使って掃除するか」
原田さんの部屋に向かいながら火鉢を見る。私のいた時代はもうストーブとかエアコンで温度調節していたし、写真では見たことあったけど実物大の火鉢を見るのは初めてだ。