私がいた場所。

「だって君、島原ではたらくことになるってことでしょ？っていうことはこういうこともあるんだよ？」
「っんぅ…！」
更に近づいたどこか悲しそうな顔になにかを思うより早く唇を塞がれた。背の高い沖田さんに半ば持ち上げられるように頭の後ろを持たれて。それでも身長の差は埋まらないのか沖田さんが上から覆い被さるようにしているのがわかる。
苦しくて肩を押すけれどもちろん離してもらえるわけなくて、薄く開いた私の唇を沖田さんの熱い舌が割って入ってくる。並んだ歯をなぞったり舌をからめられたり、充分に堪能したところでやっと解放される。足に力が入らなくなっていて、同じく力の入らない手でなんとか沖田さんの腕をつかんでやっとたっていられるくらいだ。この時代にきて、こういうことはあまりなくなっていたがこうも堪え性がなくなっていたのか。土方さんとの時は寝転んだ状態だったしなぁ…。
「ね、どうだった？」
「どうって…」
「嫌だった？ってこと。声、すごく震えてるよ」
沖田さんを見ると目元が少し赤くなっていてあぁ、沖田さんも案外余裕なくなりそうだったのかななんて思った。
「別に、嫌とは思いませんでしたよ」
「え？」
「だって沖田さんでしたし」
「なにそれ、どういうこと」
「沖田さんのこと嫌いじゃないってことです」
「好きってこと？」
「そうかもしれないですね」
「ねぇ、はっきりしてよ。俺、あやふやなのは嫌いなんだ」
「でも、本当に誰が好きとかはわかんないんですよ」
なんなのそれ、と子どものようにむくれた沖田さんに向かってもう一言だけ添えた。
「とっても優しい沖田さん、私の芸鼓…遊女としてのはじめて貰ってはいただけませんか？」
下からのぞきこんでそう言うと沖田さんはきゅっと口を結んで私の額を弾いた。
「仕方ないからその時は貰いにいってあげる。それまでいい子で待ってるんだよ？」
「はい」
沖田さんの言い方がかわいく感じて思わず口元を緩めるとまた額を弾かれた。








「…沖田さん、この前はそういうの好きじゃないって言ってませんでした？」
「それは全然知らない人とか興味ない人のときの話」
「じゃあ私には興味あるってことですか？っていた！ちょっと沖田さん、痛いですって！！」
「…ばか」