「土方さん山南さん、おかえりなさい。お仕事お疲れさまです」
「あぁ…」
「…」
玄関先で大坂から帰ってきた二人を迎えると返事をしてくれた土方さんとは反対に山南さんはさっさと自室へ戻っていってしまった。
「…土方さんお茶をお持ちしますね。あと、少しお話をさせてください」
「分かった」
土方さんもやっぱり疲れているようで大坂へ行く前よりも低い声の返事だった。




お茶をもって土方さんの部屋にはいると帰ってきたばかりだというのに広い背中は机に向かって座っていた。
「土方さん、」
「ん?…あぁ、お前か」
「帰ってきたばかりでお疲れでしょう。今日くらいはおやすみになってはどうですか?」
「やらなきゃなんねぇことがあるんだよ。で、話ってやつを聞こうと思ってんだが…先に俺の話をきいてもらえるか?」
「はい」
快く了承すると土方さんは畳に手をついた。
「悪かった」
「え!?何ですか?こんな、止めてくださいよ…」
「お前が行く前に言っていたことが分かった。あんなにいっていたのに気づくのが遅すぎた…山南さんがああなったのは俺のせいだ」
「違います!私も悪いんです。すみません、土方さんに責任を押し付けるようなことを言って…」
「いや、お前が何もいってなかったとしてもその時そばにいたのは俺だけだ。それなのに深手を負わせた責任は俺にある」
まるでそのまま額を畳につけそうな勢いで謝る土方さんを見るのはなんだか嫌でまだお盆に乗ったままだったお茶を差し出した。
「落ち着きましょう。土方さんがそんな風でどうするんですか。…それにもし山南さんが怪我をしなかったら歴史が変わったことになっていたんです。そうなっていたら私は今ごろ消えていたかもしれません。私もどこか少しほっとしてしまっているのです。一人で責任を背負いこまないでください」
顔をあげた土方さんは情けなさそうに小さく笑っていた。それでも目はあの日初めて会った日と同じようにぎらぎらと輝いていたから、きっと大丈夫だろう。