「ちょっと休むか。手、大丈夫か?」
「大丈夫、だけど…はあぁぁぁ~…」
大きくため息をつくと隣から困ったような笑いが聞こえてくる。
座り込んで膝に顔を埋めて唇を噛んだ。なんの覚悟も持てていない自分が嫌だ。足を抱え込んでもう一度ため息をつくと平助さんの温かい手が私の頭を優しくたたいた。
「俺がやらせといていうのも変だけどさ、無理はすんなよ?一応、と思ってやってるけどお前のことは俺らが守るつもりだし」
「…平助さん優しい」
「そうか?多分みんなそう思ってると思うけどな」
「平助さん…」
「ん?」
「惚れますよ?」
「はっ!?!」
「冗談ですいだだだだだだ」
「こんのやろう」
いい反応だと思っていたら今度は頭をがしっと鷲掴みにされてぐっと力を入れられる。
「いたい、いたい」
「ったく、冗談でそういうこというなっつーの」
「平助さんといい永倉さんといい、ロマンチストか」
「は?」
「何でもないですー。あ、お茶持ってくるね」
「あ、おい…ってもういねぇし」






少しだけ肩に力を入れたまま摺り足で廊下を歩く。
さっきの会話、流石に惚れそうになったってことはないけれど泣きそうになった。
厄介者でしかない私をみんなは受け入れてくれて、信じてくれて、守ってくれている。
上を向いて瞬きをしないように目を開いた。涙がこぼれないように。
「…もっと頑張らないと」
そう呟いて勝手場へ向かった私の耳に入ってきたのはいつかは必ず聞くと分かっていたものだった。