「行く前にお前のいれた茶を呑みたかった」
「行く前に死亡フラグたてないでくださいよ…」
史実では蝦夷まで生きてるから大丈夫だと思うけど。
きょとんとしてふらぐ?と復唱している土方さんを半目で見ながら息をついた。
「お前の茶は落ち着くんだ」
そういう土方さんの目には確かにいつもの鋭さが無くて落ち着いていた。これから警護に行くというのにそれでいいのかなとも思うけれど向こうについたらスイッチみたいなものが切り替わるのだろう。
「土方さん、土方さんは何があっても死ななさそうですけど、」
「おい」
「でも…あの、他の隊士のことも気にかけてあげてください」
「なんだ、急に」
「私がここに来てから初めて遠出する方々なので心配なんです」
「大丈夫だ、新選組の奴等は強い。死ぬことなんてねぇさ」
「そう、ですよね」
死んでしまうことも心配だけど怪我をしてしまうことも心配なのだ。新選組のことを詳しく知っていてこれほどまでに後悔したのは今回が初めてだがこれからはもっと増えていくのだろう。
歴史を変えてはならないという覚悟を決める必要が私にはある。
訝しげに私を見る土方さんの視線で無意識に眉を寄せていたことに気付いてあわててへらっと笑った。
「お前が何を心配して思い詰めてるのかは知らねぇが、俺がいる限り無駄な心配はいらねぇよ」
「はい、ここで帰りを待っていますね」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でられたことに少しだけ頬を染めて空になった湯飲みをお盆にのせた。