急に騒がしくなったと感じてやっと目を開けた。
「え…」
そこには私の知っているものや人はいなくて、そう、まるで江戸時代に迷い混んでしまったようで。
驚きのあまりに声もでなくてただぽかんと口を開けていた。後ろを振り返って見るとどうやらここは神社のようで社がたっている。上を見れば鳥居のきれいな赤。
「貴様、何者だ」
「怪しい着物だな」
やっと立ち上がった私の前に現れたのは浅葱色の羽織。腰に下げた長いものは私のいた時代じゃ許されないはずのもの。ここは、本当に幕末なの…。
ぼぉっと浅葱色に目を向けていると腕を引っ張られる。
「答えよ、何者だ。斬るぞ」
斬るという言葉と同時に聞こえたかちゃっという重たい金属の音が妙に耳に残った。
「お前達、何をしている」
「隊長…怪しい奴が、」
背中まで伸びた髪を緩く結んだ男が一歩前に出てくる。隊長ということはもしかしたら名前はしってるかもしれないなんて他人事のように考えた。
「此奴は何か悪事を働いたのか」
「いえ、今のところは…何も」
「では、連れていけ。判断は上に任せる」
声を漏らす間もなく洋服に包まれた私の腕を和服の彼がつかんで引いた。
「来い、刃向かえば斬る」
「…はい」
どうしてこうなったのか。いや、これは夢ではないのか。
呆然と歩くなか引かれる腕の痛みに顔をしかめた。