どうしてこんな風になっているかは自分がよくわかっている。認められたといっても自分はいつ殺されてしまうのか、いまだに夢じゃないのかなんて考えてしまう。生活と立場の急激な変化に身体も精神も追い付いていないのだと思う。早く慣れなければと思えば思うほどあの時の刀の冷たさが体を包む。
夜、外の監視に聞こえないようこっそりと流す涙で布団は塩辛く、下唇はところどころ切れていて舌の上を滑る血の味が余計に私を憂鬱にさせていた。





御膳を下げて一通り洗い終わると部屋に戻った。必要以上部屋からでないのは、監視の方に申し訳ないからと私自身が新選組に肩入れしすぎないようにするため。もうそんなの手遅れのような気がするけれど気休めでもそうしてないと私は歴史を大きく変えてしまうことになってしまうかもしれないのだから。
「なぁ、」
「はい、何ですか藤堂さん」
襖越しに聞こえた藤堂さんの声は稽古の後だからか少しだけ涸れていた。
「外だとさみぃから悪いけど入れてもらえるか?」
「はい、どうぞ」
すっと襖を開けると藤堂さんがわりぃなと苦笑した。
「いえ、まだ春先で肌寒いですから。風邪でもひいたら大変です」
「ありがとな、お前も気を付けろよ」
「はい、ありがとうございます」
軽く頭を下げると少し上から咳き込む音が聞こえてくる。
「喉の調子が悪いのですか?」
「あー…さっき稽古で声出してきたからか?ちょっとな」
「お茶を用意しましょうか?」
「頼むよ。あぁ、どうせならふたりで飲もうぜ」
藤堂さんの優しい言葉にはいと返事をしてお茶の用意をしに勝手場に足を運ぶ。もちろんその間も藤堂さんがついてきてくれている。湯飲みをお盆にのせて部屋に戻る。
ずずっと音をたててお茶を啜りなから藤堂さんをちらりと見ると彼も私を見ていたようでばっちり目があってしまう。あわててそらしたけれど視線はびしびしと伝わってくる。無言に耐えられなくなったのは私の方が先だった。