「斎藤さん、巡察終わりですか?お疲れ様です」
「ああ、お前も今日は監察方の仕事で町に出ていると聞いていたが」
「さっき帰ってきたところです」
浅葱色の羽織をちょうど脱ぎかけている斎藤さんを見つけて声をかけた。町では会わなかったが彼も今帰ってきたところみたいだ。
「それより今から時間ありますか?いい甘味処を見つけたので一緒に行きませんか?」
「特に用はないが、甘味なら総司といったらどうだ?あいつは甘味好きだろう」
「なんか…最近避けられてる気がするんですよね。その辺の話もしたですし一緒に行きましょうよ」
「わかった。その前に副長へ巡察の報告と羽織の片づけをしてくる。少し待っていてくれ」
「はい」




少し無理矢理だったが約束を取り付けると私は縁側に腰掛けた。
心地よい日向のあたるここは何気に気に入っている場所だ。
「おや、東條君ではないか」
「伊東さん、こんにちは」
ふわぁ…とあくびをしていると伊東さんの声がきこえたのでくるりとふりかえった。まるで最初に会った時のようだ。
「こんなところで座って…どうしたんだ?」
「斎藤さんを待っているんです」
「斎藤君を?どこかいくのか?」
「はい、気になっていた甘味屋に誘ったんです。息抜きにでもって」
「そうか、二人は仲がいいのだな」
「そうですね、彼は裏表のない人ですから一緒にいて安心しますし」
「ああ、斎藤くんは誠実という言葉がよく似合うな」
うんうんと頷いている伊東さんもとてもいい人に見えるのだが…なんだろう、どこか違和感がある。伊東さんと同時に入隊した篠原に呼ばれて彼は中に入っていったが、どれとも言い切れない違和感にもやもやとしたまま斎藤さんを待った。










「すまない、待たせた」
「いえいえ!私が無理矢理誘ったんですし」
「それもそうだな」
「え、そこ肯定しちゃうんですか」
「冗談だ」
くすりと笑った斎藤さんの顔がとてもきれいで一瞬まばたきすら忘れた。
「どうした?」
「なんでもないです、それより行きましょう!」