「伊東さんを新選組に…?」
「ああ!」
禁門の変から少しした頃、一室に近藤さん土方さん山南さん平助さんが集まっていた。私がちょうど頼まれたお茶を持って行ったところ先ほどの会話が耳にはいったのだ。
伊東さん…伊東甲子太郎か。
「彼は剣術に長けているのに加えて、弁もたつからな!」
「それで?俺に橋渡しをしてくれってこと?」
「ああ…」
一人ずつお茶を渡していく。
近藤さんは伊東さんに来てもらいたくてしょうがないといった感じだけど土方さんと特に山南さんは複雑そうな表情だ。
平助さんと山南さんと伊東さんは同じ北辰一刀流だから橋渡しを頼んだのだろうけどだからこそ思うところが山南さんにはあるのだろう。
それに伊東さんは尊王派なのだ。
同じことを思った山南さんが重そうな口を開いた。
「しかし、彼は尊皇派です。我々新選組と相容れるでしょうか」
「なぁに!俺も少ししたら江戸へ向かう。きっと話せばわかってくれるさ!!」
平助さんの肩に手を置いて再度頼むと近藤さんは部屋を出て行った。平助さんもすぐに江戸へ発つ準備をするからと部屋を出たが、土方さんと山南さんはやはり渋い顔をしたままだった。











「じゃあ俺はしばらくここをはなれるけど、元気でな」
「うん、いってらっしゃい」
そうして伊東さんと新選組の橋渡しをするため平助さんが江戸へと向かって、数日後には近藤さんもそのあとを追った。
いつも元気な2人がいない屯所はどこか静かで寂しげだ。
「…はぁ」
「どォした?椿」
「原田さん…なんか寂しいなって」
「あァ…近藤さんも平助もいねェからなァ」
「それに近藤さんがいないことで土方さんもいつもより忙しそうですし」
土方さん達のやる仕事には極秘のものもあるので私には手伝うことができないのだ。それが少しもどかしい。
「ま、仕事手伝えねェなら休憩を手伝おうしかねェな?」
にっと笑った原田さんの右手には包みがぶらさがっていて私もつられて笑った。