しかし私達が到着するころには戦闘は終わっていて黒い煙と負傷者が見えるだけであった。

「っち、遅かったか」
「過ぎたことは気にしても仕方ない。できることをやるぞ」
「…ああ。原田、公家御門へむかって長州の残党を追い返してきてくれ」
「おう!まかせろ!いくぞ、お前ら!!」
原田さんが槍を高く掲げると隊士たちもおおっと声を上げて彼に続いていった。
「斎藤と山崎は、状況確認と蛤御門の守備に当たれ」
「はい」
斎藤さんが静かに返事をしてから山崎さん、三番隊の人に目配せをすると蛤御門に向かっていった。
「近藤さんと源さんは会津藩の上に掛けあってきてくれ、ここを離れるには許可が必要だ」
「あぁ!まかせてくれ!」
「私は近藤さんが暴走しないように見張っておくよ」
井上さんの言葉に隊士たちが笑って近藤さんは参ったというように頬をかいた。
「ああ、源さんたのんだ。残りの者はついてこい!天王山に向かうぞ!!」

返事が聞こえたと同時に土方さんが私に目くばせをした。
ついてこいということなのだろう。小さく頷くと土方さんはふいっと目をそらして前のほうへ出て行った。永倉さんも前のほうへ出てみんなを誘導しているようで時々大きな声が聞こえてくる。

私は最後尾をゆっくり進んでいた。
状況の確認というか…未来を知っているからこそだ。
私たちが天王山につくくらいに、このあたりの町は火の海に消されてしまうのだから。私にそれを止めることはできないけどせめて今を目に焼き付けておこう。
せっせと歩く前の隊士の背を追いながらも周りを見渡した。
そういえば、池田屋が終わって数日したころ巡察の時にみた祇園会の山鉾も燃えるんだっけ…。
江戸は火事が多いって聞くけどここは京だし町人たちが混乱して命を落とすこともあるだろう。ところどころからあがる煙に顔をしかめながら私も足を進めた。