私がいた場所。


「わかった」
「気をつけてな」
「うん、平助さんも…」
大丈夫、平助さんも沖田さんもこんなところで死ぬ人ではないから。
そう自分に言い聞かせると階段を駆け上がった。




「ぐっ……!」
「沖田さんっ!?」
襖の間から沖田さんの苦しそうな声が聞こえたと同時に私は飛び出した。
右腕が熱い。突然飛び出してきた私に驚いたのか一瞬ひるんだ男の首を突いて貫通したところを月の明かりで確認すると周りにもう敵がいないか見渡して沖田さんに駆け寄った。
「…身体が熱い、けど吐血はしていない…?」
沖田さんは池田屋で昏倒すると聞いたことがあったから病によって吐血をするのかと思っていたが見た限り違ったらしい。それならばそのほうがいい。
確か、突入する前彼は汗をたくさんかいていた。いつもは涼しげにしているのに…。
「熱中症…?」
だとしてもきちんと措置をしないと最悪の場合死んでしまうこともある。一階に井戸があったはずだ。そこで水を汲んでこなければ…。
「沖田さん、少しだけ待っていてください」
一階に降りるとほぼ戦いは終わっていて何名もが捕縛されていた。私は井戸を見つけると汲んだ水をもって一言だけみんなにきこえるように声を張った。
「二階で沖田さんが倒れています。手が空いている人は運ぶのを手伝ってください」
それだけ言うとまた上へのぼり、沖田さんの横に座った。
新しい手ぬぐいを出すと水につけて沖田さんの首元に巻き付けた。少しでも熱を逃がそうと襟元もゆるく開ける。どうにかして水も飲ませてあげたいが沖田さんは荒い息を繰り返すだけで水を口元に近づけても飲もうとしてくれない。
「…」
私は小さく息をつくと水をできるだけ多く口に含んだ。
そのまま彼の唇に押し当てて少しぬるくなった水を流し込む。口に端からこぼれた水を拭うこともなくまた水を含んでは流し込んでいく。どちらかのものか、それとも返り血によるものか少し血の味がしたけれどそれすら気にならなかった。
数回行ったところで沖田さんの長めのまつ毛がゆれてうすく目が開けられた。
「…っ沖田さん!大丈夫ですか?もうすぐ救護班が……わっ!?」
急に頭を引き寄せられて私は沖田さんの胸に倒れこんだ。どくんどくんと脈打つ心臓の音が聞こえて口を閉じた。
その音はまるで私を安心させるかのように響いてきて、瞼がゆっくりおろされていった。