私がいた場所。




「土方さんっ!」
「椿…無事だったか」
「はい、あの人たちって…」
「…役人たちだ」
味方である役人たちがこちらに向かってきているのが見えているのに土方さんの表情は厳しい。
「あいつら俺たちの手柄を取りに来やがった」
「えっ!?どういうことですか?」
「役人たちが池田屋に踏み込んだ時点でこの事件はすべてあいつらの手柄にされる。そのくらい俺たち新選組の立場は弱いってことだ」
眉間の皺をより濃くした土方さんは役人たちにむかって行くと声を張った。
「局長以下我ら新撰組一同、池田屋にて御用改めの最中である。一切の手出し無用」
「なんだと?我らは藩として動いているのだぞ。それを邪魔だと申すか!」
「羽織を身に着けてねぇ奴が中に入っても隊士に斬られるだけだ。それでも中に入るってんなら役人さん達は頭がおかしいらしい」
土方さんの言葉に役人たちはぐっと悔しそうな顔をして足を止めた。
「お前は行け、まだやることが残っているだろう」
「はい!」
そうだ、中ではまだみんなが戦っている。
広がる血溜まりに足をとられないよう気をつけながら中に入っていくと思わず袖で鼻を覆った。きついくらいに血の臭いが充満している。
「誰か!手のあいた奴は奥に行ってくれ!平助がっ…!!」
「私がいきます!!」
返事をするよりもはやく戦っている人たちの合間をぬって奥へ進んでいく。ぱしゃっと足音が立って下を見ると人が倒れていた。羽織を着ていないから長州の者だ。
「だ、誰だ!?」
顔を上げると額から血があふれ目を閉じたまま刀をこちらに向ける平助さんがいた。
「私だよ、椿。大丈夫?今止血するね」
懐にしまい込んでいたさらしを斬られているところに巻き付けると袖の綺麗なところで彼の目元を拭ってあげた。額から流れた血のせいで目が開けられなくなっていたからだ。
「もう大丈夫だ。椿、わりぃけど二階に行けるか?総司がいるはずなんだ」
「でも、平助さんは…」
「もうすぐ救護班がくるさ。こっちのが押してるみたいだしな」
確かに永倉さん達の雄叫びが聞こえてくるから大丈夫なんだろう。それに沖田さんもこの池田屋で昏倒するはずだから心配だ。