シオン【完結】


「……っ」


祥太郎の目からは涙が溢れている。
俺の目からも。


「久美は、幸せだったわ。ありがとう」


久美の母親が、今にも泣きそうなくしゃくしゃの顔で笑う。
それに祥太郎が返す。


「幸せ、だったのは、俺達の方ですっ」


祥太郎の言葉に、俺は更に涙が込み上げる。


「久美とっ、久美と出逢わせてくれて、産んでくれて、ありがとうございましたっ」

「祥太郎君…」

「俺も、感謝してもしきれません」

「遼佑君…、っ」


久美の母親も堪え切れず、涙を零した。


それから、俺達は暫く泣き続けた。


久美を守れなくて、すみませんとだけは。

どうしても言えなかった。


久美は望んで、死を選んだんだ。


もしかしたら、久美以外の誰かがあの時死ぬ事になったかもしれなかったのに。


その久美を否定する様な事は、どうしても言えなかったんだ。
祥太郎も、きっと同じ気持ちだった筈だ。