シオン【完結】


遼佑は視線を彷徨わせながら、話しかけていいのか戸惑っている様だった。

ハンカチで抑えていた手を下ろすと、私は遼佑の前に真っ直ぐに向かう。


そして、


「久しぶりだね」


声をかけた。



遼佑は一瞬眉を顰めて、だけどもすぐに微笑んだ。


「久しぶりだな」


その笑顔が、昔と変わらなくて。

それがまた苦しくなった。


「…久美は、もう行って来た?」

「うん」

「じゃあ、俺も行って来るわ」

「あ」


そうやって、すぐに中へ入ろうとする遼佑の洋服の裾を掴んだ。
それは反射的だったと思う。


目を真ん丸にして驚いていた遼佑だったけど、すぐに顔を緩ませると優しく尋ねて来た。


「…どした?」

「……いや」