シオン【完結】



「大丈夫、祥太郎とは仲直り出来るから」


それでも久美は首を振るだけ。


オロオロしながら、久美の席まで近寄る。


「なあ、泣くなって」


触れる事も出来なくて。
そう言うしか出来なくて。


「俺は…久美に笑って貰いたいんだよ…」


気付けば、するりとそんな言葉が出ていた。



「…りょ…う、す」


久美はゆっくりと顔を上げて、俺を見る。
少しだけ赤くなった目。


どうしようもなく、抱き締めたい衝動に駆られる。


これは祥太郎を想っての涙なのに。



「……何してんの?」


久美に伸ばしかけた手を寸で止めたのは、その声がしたから。


肩を揺らしながら、俺は入口に立つ人物を見る。



祥太郎は俺を真っ直ぐに見ていた。
拳を握り締めて、何かを抑える様に言葉を発した。