「あの子が死んでなけりゃなあ」 何気に口をついてでました。 それは言ってはいけない言葉でした。 ハルを責めてもどうにもならないことはわかっていましたし、言葉にするだけでも苦しい記憶だったのです。 しかし、その言葉を口に出してみた時、隆造の心の中で何かが静かに解け始めていました。 そして、その中から現れてきたのは他でもありません。 まだ幼かった娘の、あの頃のままの笑顔でした。 その顔はいっしょに空を飛んだ女の子の笑顔になり、若い頃のハルの笑顔に変わっていきました。