ちょうどその時スマホが鳴った。

「もしもーし。えー…、あった。」



相手はあたしの弟。



「何、その間は。」



くそ生意気だけど、姉想いの良い弟。



「ふざけようと思ったけど、
 めんどくさくなった。」



「早く帰りなよ。今日グラタンだから。」



「はーい。」



返事をすると通話が終了した。



はーい。ってあたしはガキか!



帰ろうとして振り返ると、
男が立っていた。



男は今教室に入ってきたらしく、
驚いている。
そして、あたしが持っているものを見て、
表情が変わった。
どうやら持ち主のようだ。



「これ、あんたの?」



「…俺のだ。返せ。」



「誰からもらったの?」



「…いいから、返せやぁっ!」



突然切れ始めた男。すでに中毒か、



「うるさいな…」



あたしは空いていた窓に手をかけ、
外に飛び降りた。
教室は三階。窓の外はコンクリート。



「よっ…!」



勢いをつけて回りながら着地。
これくらい朝飯前だっつうの!


教室で驚いている男に手を振り
あたしはそのまま下校した。




この時あたしは気づかなかった。


その出来事を全て見ている集団がいることに。