水無瀬さんに背を向けてドアに向かうと



「待って!!」



後ろから聞こえた必死な声に振り向くと、すぐ近くに水無瀬さんがいて。



「う、わっ!!」



ドンッ、という派手な音に、背中に電流が走ったような痛みとお尻に感じた鈍い痛み。


腰のあたりに感じる程よい圧迫感。



「水無瀬、さん……?」



「だめ……」



気がついたらぎゅう、と抱きしめられていた。



「待って…だめ……だめなの……っ」



いつもと様子の違う水無瀬さんに困惑していると、バタバタと複数の足音が後ろで聞こえた。



「城越っ、大丈夫か……って、何これ?」


「城越が逃げないように、ちょっと……」



あはは、と赤崎さんの乾いた声が聞こえる。


ドアが開かないと思ってたら、何かしてたのか……


予想してたといえばしてたけど。



「日向ー、生きてるー?」


「生きてるけど……」



心配そうなみんなの声にあれ?と首を傾げる。


さっきから俺の心配ばかりのような……


こういうとき、普通は水無瀬さんの心配をすると思うのは俺だけか?



「? まだドア開かないんだけど」


「え?仕掛けはこれで全部取ったわよ?」


「あ、ごめん。それ俺のせい」



今、ドアに凭れかかるように座ってるから……



「なら早く退けっ」



と、言われても……



「……動けないから無理っぽい」



かなりしっかりと抱きしめられていて、上はともかく、下は動けない。


さすがに病人相手に無理矢理……はないな。


好きな相手なら尚更。



「浅葱」



そのときピクリと水無瀬さんの肩が揺れたように感じたけど、多分気のせいだと思う。



「今、水無瀬さんに、その……抱きつかれてるんだけど、どうすればいい?」



言おうかどうか迷ったけど、言わなければずっとこのままな気がして現状を伝えた瞬間。


ピシッ、と向こうの空気が凍った。