目を覚ました水無瀬さんは、ボンヤリしながら何度かまばたきを繰り返してこちらをみた。
熱のせいか、その瞳はいつもより潤んでいる。
「しろ、こし…くん……?」
ちょっと舌足らずな声で名前を呼ばれて心がざわめく。
「大丈夫?」
できるだけ平常心を保って水無瀬さんに声をかける。
「んー……あつい」
額に触れていた手がそっと取られたかと思うと、水無瀬さんは俺の手を頬にあてた。
いきなりのことで驚いていると、水無瀬さんが気持ちよさそうに目を閉じる。
「ふふ……冷たくて気持ちいい」
無邪気に笑う姿にドクン、と心臓が大きく鳴った。
手から伝わる頬の熱さや柔らかさに、昨日のことが思い出されて……
脳の奥がぐらりと揺れるような、何かに呑み込まれてしまいそうな感覚に侵される。
ダメだ……
このままじゃ昨日の二の舞になってしまいそうで怖くなり、そっと手を離す。
少し寂しそうな目を向ける水無瀬さん。
「今日は、水無瀬さんに謝りに着たんだ」
「謝る……?」
きょとん、として俺を見たかと思えば、恥ずかしそうに布団を顔まであげる。
見られたくないのか、顔を隠す水無瀬さんにズキッと胸が痛む。
そう、だよな……
無理矢理、あんなことをして。
しかも好きでもない相手と。
嫌われても、仕方ないと思う。
伸ばした手にぐっと力を入れて引き戻す。
「ごめん……昨日はどうかしてたんだ。
謝って済むことじゃないけど、どうしてもちゃんと、謝りたかったんだ」
布団を被っているから、水無瀬さんがどんな表情をしているのか分からない。
「本当に、ごめん……」
そろそろここにいるのも限界な気がする。
ちょうどケータイあるし、颯呼び出してドアを開けてもらうか。