「小さいときは、それで散々なめにあった……」



小学校のときは、葵が熱を出すといっしょに休んで、その間ずっと抱き枕にされていたり。


そのせいか熱を移されたし。


違うクラスのときでも、葵の様子がおかしいと呼ばれて、元気なはずのオレが葵をおぶって家に帰るはめになったり。



「オマケに……」



中学のときに熱を出したときは、いっしょにお風呂に入ってくれないと嫌だとか言ってワガママを言ったり。


挙げ句の果てに泣き出すし。



「それで、葵とお風呂入ったの?」


「……じゃないと離してくれそうになかったんだよ」


「……日向には内緒にしておこっか」


「そうしといて」



あのときは本当に勘弁して!と思ったな。



「極めつけは、葵はそのときのことを覚えてないっていう……」



だから熱が引いたあとでそのときのことを言っても、葵には無駄。



「経験上、一人で行くと葵に捕まって動けなくなるかもしれなくて……

オレといっしょなら被害はオレ一人に向けられるからいいかなって」



オレの話を聞いて、二人は黙ってしまう。


まぁ、こんな話を聞いたらそうなってもおかしくはないと思う。


普通のときの正常な葵は控えめというか、そういうことしなさそうだし。



「それにしても城越遅くないか?」



もうだいぶ時間が経ってると思うけど……



「まさか、」



ハッとして見ると、前の二人はどこかぎこちない笑みを浮かべていた。



「……二階行ってくる」



立ち上がった瞬間に上から大きな音が聞こえた。