「ごめんねぇ、あーくん。助かったわぁ」
「今度から気を付けろよ」
「うふふ、はーい」
母さんが忘れたというカバンを渡して、急いで家に戻る。
本当に、少しはこちらの都合を考えてほしい。
葵の看病を任されたかと思えば、今度は届けものをしてほしいとか……
断ろうと思ったら電話は切れてるし。
家に帰ると城越がリビングにいない。
「あら、浅葱くんおかえり」
「おかえり」
「城越は?」
「トイレに行ってるわ」
ニッコリと笑った赤崎さんにほっとする。
とりあえず、葵のところに行ってないならそれでいいか。
冷蔵庫から新しいお茶を出して飲んで一息つく。
「なぁ、浅葱」
「ん?」
楠が話しかけてきてそちらに顔を向ける。
「さっきから不思議に思ってたんだけど、なんで一人で水無瀬さんに会うのはダメなの?」
「あ、それあたしも思ったわ」
興味深そうに二人はオレを見る。
……まぁ、葵の友だちだし、言っても不都合なことはないか。
むしろ知っててもらった方がいいかもしれない。
「簡単に言うと……葵は高い熱を出すと、人が変わるっていうか、めんどうになるんだよ」
「「めんどうになる?」」
不思議そうな顔になる二人に説明を続ける。
「誰でも熱をだしたりすると、寂しくなったり心細くなったりするだろ?
だから小さいときには親にそばにいてほしかったり、優しくしてほしかったり。
葵はそれを顕著にした感じって言ったら分かりやすいか?」
しばらく考え込むようにしてから楠は口を開く。
「つまり……水無瀬さんは熱を出すと甘えん坊になる?」
「まぁ、そんなとこ」
そう言ったとき二人の顔が歪んだような気がするけど。
気のせいか……