リビングを出てすぐのところに赤崎さんはいた。



「こっちよ」



手招きされるままについて行くと、階段をのぼっていって。



これ、大丈夫なのか…?


と心の中で思うが、颯の忠告を思い出して口には出さない。



「あった」



赤崎さんの止まったところを見ると、ドアには"AOI"と書かれたプレートがかかっていた。



「ここって……」



もしかしなくても水無瀬さんの部屋、だよな。


ガチャ、と躊躇わずにドアを開ける赤崎さんに、声をかけて止めようとすると。



「……えっ」



背中を押されたかと思えば、後ろでドアの閉まった音が。



「………は?」



状況が掴めずに思わず体が固まる。


さっきと景色の違う空間。


目の前にはベッドに寝ている水無瀬さんがいて。



………押し込められた?


慌ててドアを引くが何故か開かず。



「っ、おい、そこにいるんだろ!」



水無瀬さんを起こさないように小声でドアの向こうに話しかけると、案の定赤崎さんの声が。



「ここ開けろって!」


「何慌ててるのよ」



慌てたくもなるだろ!


という怒号はなんとか飲み込む。



「いいから開けろ!」


「ダメよ。ちゃんと葵と二人で話なさい」



遠ざかっていく足音。



………マジかよ。


浅葱に言われたこと、破ってしまった。


どうすれば……


情けないことにドアの前で項垂れていると、後ろから苦しそうな声が聞こえた。


そういえば、浅葱が熱高いって言ってたっけ……


音をたてずに近づいてみると、なるほど赤い。



「……ごめん」



俺のせいで、こんなに苦しめて……


罪悪感が胸を占める。



「本当に、ごめん……」



そっと額に触れると、水無瀬さんの瞼が開いた。