リビングに戻ってきた浅葱に電話の相手を聞くと、母親だったらしい。
「忘れ物したから届けてほしいって……」
「あら。それなら行ってきたら?」
そんなに時間はかからないんでしょ、と赤崎さんが勧めるが、浅葱は迷っている。
多分俺たちが心配なんだと思う。
もしくは家の人を差し置いて、俺たちに家を任せることか……
優しいところが水無瀬さんと似てるな、と思った。
さすが双子。
「でもやっぱり……」
「大丈夫よ。リビングでおとなしくしてるから。ね?」
颯と俺に向かってニッコリと笑いかける赤崎さんに少し嫌な感じがした。
なんか、この笑顔、どこかで……
「じゃあ、十五分で戻ってくるから」
ちょっと待ってて、と言って浅葱は出ていった。
不気味なほど静かになるリビング。
「家の人がいなくて部外者がいるって、あべこべだよな」
「葵がいるじゃない」
「水無瀬さんは寝てるだろ」
颯に同意しながらさっきだされたお茶に手を伸ばす。
飲んでいると、さて、と言って赤崎さんが立ち上がった。
「城越も颯もちょっと来て」
さっさとリビングを出ていく姿に少し焦る。
「おい、颯、止めなくていいのか?」
暗に、浅葱に待ってろと言われただろ、と目で伝える。
けど、颯は困ったように、というか諦めたように笑うだけで。
「こういうときのちなつは強いから……
言う通りにしておいたほうが身のためだよ」
これ、俺の経験からの忠告、と言われ。
……もうそれ、従うしかないってことだよな。
「早く来なさいよー!」
諦めて俺と颯は赤崎さんのあとを追った。