……誰だ?



「さすがイケメンくん。女はほうっておかないわね」



ほら、行くわよ、と言われて、俺は赤崎さんにおとなしくついていく。


もう、ここまで来たら何を言っても無駄な気がした。



近づいていくと中心にいた人がこちらを向いて。


ピタリ、と足が止まった。


それと同時に沸き上がるのは、あのときと同じ嫌な感情。



「浅葱くん!ごめんね、待った?」


「あ、大丈夫です」



女子の中心から抜け出せて、心なしかほっとした表情を見せる。


前見たときは遠目だったけど、近くで見ると顔が本当に整っていて、女子にモテるのも分かる。



「城越さん、ですよね?」


「……そうだけど」



自分で思っていたよりも低い声に、少し驚く。


でも相手はそんなことに気づいていないようだった。



「今日はちゃんと話したいと思って、赤崎さんに頼んだんです。
時間、ありますか?」



反射的にない、といいかけたけど、赤崎さんの怖いぐらいの笑みに沈黙した。



「せめて、カバンを…」



持っていきたい、と言おうとすると、後ろから聞き覚えのある声がした。



「日向ー!」


「……颯」



こちらに手を振ってきた颯の手にはカバンが二つあった。


もちろん、俺の。



「ちなつが勝手に連れて行くから大変だったよ」



女子からの質問が、とは言われなくても分かった。



「あ、先生に俺と日向が部活休むことも言っておいたから。
あとカバン」



はい、と渡された自分のカバン。


……逃げる口実がなくなった。



「ていうか、お前ら目立ちすぎだよ」



呆れたような颯。


まぁ、確かに周りには大量の女子。


目立たないことの方がおかしいと思う。



「とりあえず移動しましょうか」



赤崎さんの言葉に、俺たちは近くのファミレスに向かった。