濡れた服を着替えもせずに、そのまま床の上で丸くなっている葵の姿が。
床濡れて……って、今はそっちじゃない。
「葵……おいっ!!」
体を揺すると微かに目を開ける。
その体は熱くて。
まさか……
ごくり、と喉が鳴る。
「……あーくん?」
「げ」
普段は浅葱と呼ぶのに、あーくん呼び。
「あーくぅん……」
ギュッとこちらに抱きついてくる葵に。
あ、これダメだ。
熱だしたな。
と思った。
なんとか母さんを呼んで葵を着替えさせてベッドに寝かせる。
「結構高いわねぇ……」
体温計を見て母さんがため息をこぼす。
「どうしましょう。お母さん、明日用事があるし……」
ちらり、と向けられる視線。
「あーくん、お願い…」
予想はしてたけど、本当に頼まれるとは。
いつものことながら、結局断れずにオレは今、学校を休んで葵の看病をしている。
今は寝ていてくれてるが、さっきまでは大変だった。
葵は……熱を出しているときはめんどくさい。
まぁ、それは今は置いておくとして。
しばらくは眠ってるだろ、と思い立ち上がると、葵のケータイが鳴った。
「……っ」
勘弁してくれ!
ここまでくるのにどれだけ苦労したと思ってるんだ!
反射的にケータイを掴み通話ボタンを押す。
「あ、もしもし葵っ?大丈夫なの?」
………ヤバイ。誰?
「葵?」
「あー…すいません。葵、今ちょっと寝てて…」
小声で話しながら廊下に出る。
「熱は高いですけど、多分今週中には下がると思います」
葵はいつもそうだ。
どんなに長くても一週間、だいたいは三、四日で元気になる。
今回も同じパターンだろ。