……これ、なんて言えばいいんだ。
あのときは正常な判断ができなくなっていたというか、リミッターが外れたというか。
とにかくそんな感じで。
どう説明しようかあれこれ考えていた俺は、颯がケータイでその姿を写真に撮っていたなんて気がつかなかった。
まして颯が「顔を赤くする日向なんてレアすぎだろ」と笑っているなんて、予想もしていなかった。
「端的に言うと、」
「うん」
「嫌われたかもしれない」
「……うん?」
いや、あれは確実に嫌われたと思う。
無理矢理、だったし。
俺の言葉に颯は混乱したように頭を振る。
「でも水無瀬さんって……だよな?じゃあなんで………」
ぶつぶつと何かを呟く颯に声をかけると、なんでもないから、と言われた。
それならほうっておいてもいいか。
悪いけど、今は自分のことで手一杯。
「おい日向。なんで嫌われたと思うんだ?」
……そこ聞くか。
かなり言いにくいことなんだけど。
でも話さないと、見つかる解決策も見つからなくなるのは目に見えていて。
「…無理矢理、……した」
「は?何したって?」
〜〜〜、だから……っ。
「無理矢理キスしちゃったんだよ!」
一瞬、この場の時間が止まったような感覚。
柄にもなくカッと顔が熱くなって、俺は片手で顔を隠した。
「…え、は?キスって……キスか?」
それ以外になんのキスがあるんだよ!
そんな思いで颯を睨み付ける。
あぁ、もう……今の状況かなり恥ずかしい。
「……つかぬことを聞くけど、それはどういうキスで?」
「どういうって……」
「つまり、軽く?それとも深い方?」
なんでこいつはそういうことを、こう、堂々と……
颯は赤崎さんがいるから慣れているかもしれないが、俺にとっては慣れてないことで。


