不意にギュッと握りしめられた感覚のした胸元にはっとする。
俺は、今何を……
唇が離れると苦しそうに呼吸を繰返し、水無瀬さんは俺にもたれかかった。
俺は、取り返しのつかないことをしてしまったんじゃないか……?
それでも、それが自分の望んでいたことなのは本当で。
罪悪感が胸を占める。
自分を抑えられなかったことに対する自己嫌悪も。
「城越くん……」
薄暗い中、水無瀬さんが俺を見ているのを感じた。
「、ごめん」
無理矢理してしまった。
水無瀬さんには他の人がいるのに。
嫌われても当然だけど嫌われたくなくて。
俺はその場から立ち去った。
ただ、これ以上嫌われたくない。
その一心で。
「日向?」
名前を呼ばれて顔をあげると、驚いた顔をした颯がいた。
校門……いつの間にか着いていたのか。
「どうしたんだよ、」
「………」
黙ったままの俺に何か感じたのか、とりあえず俺の家こい、と言われて颯の家に向かった。
「ちょっとは落ちついたか?」
そう言われたのは、風呂場に押し込められて何故か夕飯までご馳走になって、颯の部屋でくつろいでるときだった。
……正直なところあまり整理できてない。
まぁ、さっきと比べたら落ちついてるけど。
「さっきの日向の顔ヤバかったぞ。なんて言うか……死んでた」
どんな顔だよ、というツッコミは心の中にしまう。
「で、何があったの?水無瀬さんには会えたの?」
颯の質問にドキリとする。
「水無瀬さんとは会えた、けど……」
「けど?」
冷静になって考えてみると、自分がものすごく恥ずかしいことをした気がして。


