昨日のことが、頭から離れない。
自分でもウンザリするほど、昨日の場面が頭の中でリピートされている。
……水無瀬さんとあの男子が手を繋いで、仲良く出ていくところ。
余程機嫌が悪そうな顔をしていたのか、家族さえもあまり俺に話しかけなかった。
学校についてもそれは変わらず。
いつもは嫌というほど集まる視線をあまり感じなかった。
「おーはよ、日向」
唯一話しかけてくるやつといえば颯ぐらい。
「朝からそんな負のオーラ出すなよ」
みんな怖がってるって、と言われるが。
……そう言われても自分でコントロールできないのだから仕方ない。
むす、と黙り込む俺に颯は苦笑した。
「そのオーラの原因は昨日のこと?」
「………」
「やっぱりねー」
ま、それしかないか、と呟く。
「モヤモヤする?」
「……多分」
多分って……と呆れたような颯の顔が見えるけど。
初めての感情に戸惑っているところもあるのだから大目に見ろ。
「そのモヤモヤ消したいなら、ちゃんと水無瀬さんと話せよ」
「……話して、もしあの男子が水無瀬さんの彼氏だったら?」
そうでなくても、水無瀬さんの好きな人だったら?
そう思うと、情けないけど怖くて聞けそうもない。
「そんなの聞いてみないと分からないだろ」
「じゃあ、なんであんなに仲良さげだったんだよ」
友だちとしては親密すぎだろ。
異性で手を繋ぐとか。
「そんなの俺が知るかよ」
だよな。
「とりあえず、昼休みとかに心の整理して、放課後にでも水無瀬さんに会いに行け」
ちなつに頼んで昼は誤魔化してもらうから、と颯はケータイでメールをし始めた。
心の整理なんてできる気がしない。
というか黒一色で整理も何もないだろ。
「よし。ちなつには頼んどいたから、お前はとにかく話せ。いいな!!」
「………」
有無を言わせない颯に、俺は沈黙した。