まだ小降りだけど、これから強くなりそう。
それなら、もう帰ろうかな……?
城越くんに会えなかったのは残念だけど、また明日会えばいいんだし。
「浅葱とも、約束したもんね」
頑張るって……
だから大丈夫だよ!と自分を励ましていると、後ろでガサリと音がした。
え?と思って振り向くと、そこにはずっと会いたかった人
「城、越くん…?」
城越くんがいた。
どうしてここに?
そんなこと疑問が真っ先に浮かんだけど、よく見ると城越くんは傘をさしていなくて。
「大丈夫っ?」
慌てて駆け寄って自分の傘に城越くんを入れる。
よかった……あまり濡れてない。
木の下だったし、まだ小降りだったからかな。
あ、でも髪が少し濡れてる……
毛先からぽたぽたと雫が落ちて肩や顔を濡らしていく。
このままじゃ風邪引いちゃうよ……
「あ、わたしタオル持ってるから」
カバンの中からまだ使っていないタオルを取り出すけど。
こ、これはどうすればいいのかな。
タオルを渡すべき?
それとも拭いてあげるべき……?
わたしは一瞬躊躇ってから、ぐっと手に力を入れた。
そっと手を伸ばして傘を持っていない右手にタオルを持ち、濡れている城越くんの頬に触れた。
緊張で手が震える……城越くん、気づいてるかな……?
優しく濡れていた髪や顔を拭いていって。
「ふふ……ちゃんと拭かないと風邪引いちゃうよ?」
なんだか、子供みたいにされるがままの城越くんがかわいく見えてしまって。
つい、笑みがこぼれる。
その瞬間。
「、え……?」
右手を掴まれて、ぐっと引かれたかと思うと、目の前には白いシャツと微かなミントの香り。
ボスッ、とのカバンが落ちる音とわたしの白い傘が落ちるのが、視界の端に映った。


