真っ赤になるわたしを見て、ちなつちゃんはくすり、と綺麗な笑みをこぼした。
でもすぐに真剣そのものの顔になる。
「浅葱くんのこと、ちゃんと城越に説明しなさいよ?」
「? どうして?」
「どうしても。とにかく、ちゃんと言うのよ?」
いいわね、とビシッと言われて、わたしは素直に頷いた。
こういうときのちなつちゃんのアドバイスは、経験上聞いておいた方がいいからね。
残りのお昼休みは、ご飯を食べながら浅葱のことについてちなつちゃんと話をしていた。
どうやらちなつちゃんは浅葱に興味があったらしく。
と言っても、恋愛感情興味があるわけではないと言われて、ちょっとほっとした。
帰りには城越くんの教室に行ってみたけど、城越くんも楠くんもいなくて。
残念に思いながらわたしは教室に戻った。
それからあっという間に放課後になってしまい。
「はぁ……どうして今日に限って会えないんだろう」
わたしはあのお気に入りの場所でぼーっとしていた。
部活の前にも寄ってみたけど、城越くんはもう教室にいなくて。
さすがに部活中に押しかける勇気なんてわたしにはないよ。
なんだか絵を描く気分にもなれない……こんなこと初めて。
「これも、恋のせいなのかな……」
目を閉じれば城越くんの笑顔が浮かんでくる。
会いたい、な……
一日会えなかっただけなのに、こんなに寂しいなんて……
こういうのなんて言うんだっけ。
恋わずらい?
自分が体験することになるとは思わなかったなぁ。
どれぐらいぼーっとしていたのか分からないけど、ぽつり、と頬に何かが当たる感じがして空を見上げた。
「雨……?」
やっぱり降ってきちゃったんだ。
お昼も雲行き怪しかったし。
「折り畳み傘、持ってきて正解だったな」
カバンから傘を取り出して開く。
灰色の雲に、白い花が咲いた。


