「寂しくなるとは思うけど、浅葱の幸せの方がわたしには大切だよ」
「葵……」
「それに、寂しいって言っても毎日家で会うんだし。
浅葱とは将来的に考えても、いつまでも頼ってるわけにはいかないし」
今回のことはわたしにとっても浅葱にとってもいいことだと思うな。
わたしも浅葱離れしないと、とボンヤリ思っているとちなつちゃんに名前を呼ばれる。
「何?ちなつちゃん」
どうしたんだろう……頭抱えてる。
体調でも悪いのかな。
「大丈夫?気分悪いの?」
「……頭が混乱してるわ」
「頭?混乱?」
きょとん、としているとちなつちゃんはいきなり顔をあげた。
び、びっくりしたぁ……
「葵っ!!」
「はいぃっ!!」
ビシィッ、と意味もなく背筋を伸ばす。
これが条件反射というものかな。
「さっき、毎日家で会うって言ってたわね?
どういう意味?」
「ど、どうって言われても……言葉通りの意味ですが……?」
「ちゃんと説明しなさい!!」
こっ、怖いよちなつちゃんっ!!
滅多に見られないちなつちゃんの顔に、背筋がヒヤリとする。
でも本当に言葉通りなのに、説明ってどうすればいいの!?
何を言おうか迷っていると、ちなつちゃんが先に口を開いた。
「家で、浅葱くんに会えるのはどうして?」
「か、家族だからです」
家族?とちなつちゃんが訝しげな顔になる。
「浅葱は、わたしの双子の弟ですよ?」
言ってなかった?と言うと、ちなつちゃんが固まった。
「ち、ちなつちゃーん……」
大丈夫?と目の前で手を振ってみるけど、反応がない。
え、と……これはどうすればいいのかな。
とりあえず保健の先生呼べばいいの?
悶々と考えているところに、ちなつちゃんの
「弟ぉーーっ!??」
という声が響きました。


