「今の…浅葱くん?」
「うん」
ちなつちゃんになら言ってもいいかな。
「実はね、浅葱に好きな人がいて」
え?と驚いたちなつちゃんに少し不思議に思うけど、わたしは気にせずに続ける。
「昨日は浅葱に頼まれて、その子の誕生日プレゼントをいっしょに買いに行ったの。
それで、今日が誕生日で告白もするって」
わたしは自分のことでいっぱいいっぱいで、浅葱のことを考える暇なんてなかった。
浅葱はわたしのこと心配してくれたのに……
わたし、お姉さん失格だな。
はぁ、とため息をこぼすわたしを、ちなつちゃんは複雑そうな顔で見ていた。
「葵は、それでいいの?」
「? もちろんいいよ?」
「本当に?」
こくり、と頷く。
だって、昨日浅葱が好きな子の話をしているときの顔、すごく幸せそうだった。
本当に好きなんだなぁ、って伝わってきて。
浅葱の思いが伝わったみたいに、両思いになるといいな、ってわたしまでドキドキして。
浅葱の幸せを願うことがそんなにそんなにおかしいことなのかな。
「葵は、悔しくないの?」
「悔しい?」
言葉の意味が分からなくてわたしは首を傾げる。
ちなつちゃんが、だから!と痺れを切らしたように大声を出したので、ビクッと肩が揺れた。
「そうよ!好きな人が自分以外の女に告白しようとしてるのよ!?
葵はどうも思わないわけ?
寂しいとか悔しいとか情けないとか、もっと他の思いがあるでしょ!?」
「は、はぁ…」
そんなこと、考えたことなかったなぁ…
悔しいとか情けないは意味が分からないからいいとして。
寂しい、か……
確かにら浅葱に彼女が出来たらいっしょにお出かけとかはできなくなるけど。
つまりは過ごす時間が減るわけだけど。
わたしはそれよりも……


