「ご、ごめん、ちょっと電話してもいい?」
ちなつちゃんに了解をもらってから、わたしは浅葱に電話をかけた。
三コールめで浅葱が出て、思わず「大丈夫っ?」が口に出てしまい。
「……あぁ、いや、」
「駄目だったの?」
「違うって。頼むからそこで泣くなよ」
「な、泣いてないっ」
ちょっと泣きそうにはなったけど。
浅葱に言われてぐっと我慢する。
さすが浅葱、わたしのことをよく分かってる。
ずっといっしょだったから当たり前といえばそうだけど。
「それより、葵の方は大丈夫なの?」
それより、って……
「浅葱はわたしのことばかり心配しすぎだよ!
こんなときぐらい自分のこと考えて!!」
「それは葵にも言えることだから」
呆れたような声にちょっとムッとする。
まぁ、浅葱の言ってたことがちょっと図星っていうのがあるけど。
でも浅葱はわたしの大切な弟。
浅葱の方が大事なんだよ。
「それより大丈夫なのか?」
「まだ会ってないから分からないっ!」
なんで怒ってるの、と浅葱はケータイの向こうで吹き出していた。
「浅葱は?どうだったの……?」
「まだあげてないから。放課後の予定だし」
「……え?」
そ、そうだったんだ。
わぁ、じゃあわたし先走ってたの?
は、恥ずかしい……
「ちゃんと家帰ったら言うし、こっちは心配するなよ。オレは大丈夫だから」
「うん……朝言うの忘れてたけど、頑張ってね。わたしも頑張るから」
あぁ、と言って浅葱はわたしとの電話を切った。
多分、だけど、今の浅葱なら大丈夫。
本当に多分で確証なんてないけど。
強いて言うなら、双子の勘?
「ごめんね、ちなつちゃん」
どうしても気になっちゃって、と言うと、別にいいわよ、と言ってくれて。
ちなつちゃんは優しいなぁ、としみじみ思った。


