中に入ると、浅葱は物珍しそうに店内を見渡す。
やっぱり、普通の男の子は滅多にこんなところには入らないもんね。
でも浅葱に彼女が出来たらこういうところにも行くと思うし。
今のうちに慣れさせた方がいいのかな。
まぁ、今はそんなことより。
「何か、その子に似合いそうなものあった?」
一通り店内を見回ってから聞いてみるけど。
振り返ったときの浅葱の顔は少し、というかかなり困ったような情けない顔をしていて。
「葵……」
「うん?」
「よく、分からないんだけど……」
「……??」
浅葱の言っている意味が分からず、わたしは首を傾げる。
「その…どれも似合いそうでさ」
何がいいのかさっぱり分からない、と言う浅葱に少しぽかーん、としてしまう。
「……わたし、浅葱がそんな台詞を言うなんて思ってもみなかったよ」
「オレだって言うとは思わなかったよ……」
恥ずかしそうにしながらも、本当にどうすればいいか分からない様子で。
困りきった浅葱の顔なんてレアすぎる。
本当にその子のことが好きなんだな、と浅葱の態度から伝わってきて、心が温かくなった。
「じゃあ、具体的に何をあげるかをまず考えようか」
こくり、と頷いた浅葱に何かリクエストある?と聞くと特にない、と言われて。
「ちょっとは考えようよ……浅葱の好きな子のプレゼントなんだよ?」
「そんなこと言われても……」
うーん……仕方ないなぁ。
「初めてあげるプレゼントなら、形に残るものがいいよね。
それに、身に付けられるようなものがいいかなぁ」
となると、決まってくるのはアクセサリー類……
でも初めてのプレゼントにアクセサリー……指輪とかネックレスとか?
女の子目線だと、彼氏ならともかく、友だちとして男の子からもらうとするとちょっとなぁ。