「も、もう返してよ、明乃ちゃん……」



「……すごい」


「え?」



今なんて?と言おうとしたら、明乃ちゃんがバッ、とスケッチブックから顔をあげた。


いきなりのことで、わたしもちなつちゃんも目を丸くする。



「すごい……すごいよ、葵ちゃん!!
ものすっごく上手!!綺麗な絵!!」



すごいすごいと興奮したように言われる。


最初は嬉しかった、けど……さすがに何度も言われると恥ずかしくて。


わたしは顔が熱くなるのを感じた。



「これは?」


「これは高校で使ってるので……」



そっちも見る!!と言ってまた騒ぐ明乃ちゃんに、どんどん注目が集まっているような気がする。



は、恥ずかしい……



「あ、明乃ちゃん…もう少し声を落として……!」



そんなわたしたちを苦笑しながら見ているちなつちゃん。



朝からわたしとちなつちゃんは明乃ちゃんを宥めて、更にみんなから注目してしまった。









「よし、行くわよ、葵」


「う、うん」



お昼休みになって、わたしとちなつちゃんは楠くんたちの教室に向かった。


もちろん、ちなつちゃんに言われてわたしはしっかりとスケッチブックの入った手提げを持っている。



……ここだけの話、さりげなく置いていこうとしたら、ちなつちゃんからとっても綺麗な怖い笑顔をいただきました。