城越くんの笑顔に胸がきゅんっとなる。
最近よく笑顔を見せてくれるようになったのは嬉しいけど……
わたしはその笑顔を見るとドキドキしてしまって。
きっとわたしがその笑顔に弱いことを知っていて城越くんは……
「でも、」
「ダメ……?」
「うっ…え、と……」
少し上目使いに見られる。
その声はどこか優しい響きを持っていて。
……もう、諦めるしかないのかな。
「ほ、本当にたいしたことないよ?」
「それでもいいよ」
楠くんも見たいと言っていて。
「じゃあ、明日持って来るね?」
「やった!!」
結局はわたしが折れて明日持って来ることに。
うーん……だとしたら今日はスケッチブック持って帰らないとな。
放課後まで部室は開かないし。
ため息が出そうになったところに、またしてもちなつちゃんの爆弾発言が落ちた。
「あ、葵って中学のときも美術部だよね」
「うん」
「だったらそっちも持って来てよ」
「……え?」
きょとん、とするわたしに、ちなつちゃんはそれはそれは綺麗な笑みを向けた。
「せっかくだもの。今のを見せるのも、中学時代のを見せるのもいっしょよね」
「………はい」
無言、というより笑顔の迫力が……
ちなつちゃんはもとが綺麗だから、迫力もすごい。
最終的にそっちも持って来ることになりました。
本当に、見せるほどのものじゃないのに。
でも……
ちらりと見ると、城越くんが嬉しそうに笑っていて。
それだけで、まぁいいかな、と思ってしまうわたしは単純だなぁ、と思った。